戦争を詠む 朝日新聞朝刊朝日歌壇より(毎週日曜日掲載)

 

戦争を詠む 朝日新聞朝刊朝日歌壇より(毎週日曜日掲載)

朝日歌壇(毎週日曜日朝刊)の入選歌(選者は、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、川野里子さん、)より、戦争を詠んだ歌を、わんちゃんが独断で選り抜きを。

☆⇒共選作

2025年8月 8/3   8/10  8/24   8/31 


高野公彦選

八十年経ても収骨叶はざる春洋(はるみ)の混じる一万柱(羽咋市)北野みや子

【評】折口信夫の養子・春洋が戦死した硫黄島は、多数の戦死者の遺骨収集が完了していない。

対馬丸(つしままる)が沈んだ海に最寄(もよ)りの島悪石島(あくせきじま)にけふも地震(なゐ)あり(京都市)森谷 弘志

【評】疎開児童らを乗せた対馬丸は、悪石島の近海で米軍に攻撃され沈没。

ダイインの日の遥かなり老い母の介護疲れにしばし仮眠す(小美玉市)津嶋  修

【評】ダイインは核兵器に抗議し、地に伏せる示威運動

     ※示威運動[じいうんどう]とは:一定の主張や要求の実現のため,多勢で集会や行進など  を行い勢威を示すこと。また,その集会や行進。

安青錦(あおにしき)物の見事な「内無双」母国は戦火に包まれながら(川崎市)宇藤   【評】それぞれ先場所の安青錦の活躍ぶりに感嘆した歌。

※安青錦 新大(あおにしき あらた、20043月23 - )は、ウクライナヴィーンヌィツャ州出身で、安治川部屋所属の現役大相撲力士

出撃の30分前の写真には信念つらぬく若者の笑み(宇陀市)吉岡 節子

【評】特攻隊として出撃する若者の〈お国のために行きます〉という信念に満ちた顔を見て、心の中で泣く作者。

 尊しとつくづく思うこの国の戦死者の無き八十年を(小山市)木原 幸江

【評】👆👇全ての人々が同感する歌だろう。

 戦前も戦中もイヤだこの先もずうっと戦後であってくれぬか(船橋市)藤本 典裕

 キャンパスの大樹が囲む慰霊碑の友の名撫でし父も学徒兵(宝塚市)河内 香苗

☆野草摘み「たくさん食べましょう」と言うガザの瓦礫に子を抱く母は(観音寺市)篠原 俊則

天国に行けば食べ物あると言うあばらの目立つガザの子悲し(川崎市)赤木不二男

石製の梵鐘(ぼんしょう)吊り下げ八十年愚かな戦禍の語り部として(東根市)庄司 天明

米中のどちらでもなく中立で武装もしない日本にしたい(朝霞市)堀内  碧

【評】小学六年生の作者の切々たる願い。 


永田和宏選

戦時中食べるものなく食卓は毎日毎日マツタケばかり(静岡市)青山 風吹

【評】戦時中は仕方なく松茸(まつたけ)ばかり食べていたと。戦後もある頃まで一山幾らの安値で売られていた。

「貸出中」その三文字に重みあり丸木夫妻の原爆画集(札幌市)田巻 成男

エノラ・ゲイとはその母の名ぞ広島に投下後如何(いか)に彼苦しみき(小美玉市)津嶋  修

【評】エノラ・ゲイは爆撃機の機長の母の名であった。その後の苦しみや如何に。

八十年故国目指して海底(みなそこ)を歩ける友の未だ着かざる(西宮市)市橋 昌己

【評】南の海に没したままの戦友。今も故国を目指しているはずだと思いたい。

 

川野里子選

異国語とタトゥーの花や龍混じり原爆ドームへつづく街角(広島市)金田 美羽

八十歳(はちじゅう)過ぎ父の死に場所判りたりマリアナにあらず比島マリキナ(大分市)児玉  直

【評】比島マリキナ、この地名だけが形見だ。父を思い続けた時間が重い。

☆野草摘み「たくさん食べましょう」と言うガザの瓦礫に子を抱く母は(観音寺市)篠原 俊則

【評】飢餓のガザで子を育てようとする母がいる。

被爆の日その後も続けり工場の缶詰炸裂(さくれつ)し止まぬ音が(東京都)三戸 悠紀

【評】記憶にこびりつき今も続く炸裂音だ。

白いご飯食べて母子で海へゆき死なずに帰つた戦後のある日(生駒市)辻岡 瑛雄

☆「生きるため死体の上を歩いたの」 ばあちゃんと僕が出会えた理由(筑後市)近藤 史紀

【評】戦争の実感が世代を超えて伝わる

伏せ鍬は座礼するやう立て鍬は黙禱(もくとう)するやう八月の昼は(焼津市)増田謙一郎

【評】鍬(くわ)も礼を尽くす原爆忌だ。


佐佐木幸綱選

目頭をそっと押さえて席を立つ井上ひさしの反戦の劇(三鷹市)大谷トミ子

原爆を見てきたように語り出す茶髪にピアスの高校教師(姶良市)井之川健児

米屋、酒屋、八百屋、魚屋、佃煮屋、肉屋、豆腐屋、みな焼けし夏(東京都)上田 国博

 

 

 

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