戦争を詠む 朝日新聞朝刊朝日歌壇より(毎週日曜日掲載)
朝日歌壇(毎週日曜日朝刊)の入選歌(選者は、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、川野里子さん、)より、戦争を詠んだ歌を、わんちゃんが独断で選り抜きを。
☆⇒共選作
2025年9月 9/7 9/14
9/21 9/28
川野里子選
日本刀を枕元に置き寝ていた亡父(ちち)今なら解る戦争の所為(せい)と(飯能市)高橋 節子
【評】戦争の傷の深さをあらためて思う。
佐佐木幸綱選
鶏殺す司厨(しちゅう)兵士の父なりし戦後一度も鶏を喰はざり(神戸市)横井 司
「贅沢(ぜいたく)は敵だ」を素敵だと読み換へし戦中の民の反骨おもふ(東京都)上田 国博
高野公彦選
広島で正田篠枝(しょうだしのえ)の骨の歌くりかえし読む石破総理は(横浜市)人見 江一
広島忌八時十五分手を合はす遠き異国の戦禍も思ひ(広島市)金田 美羽
被爆地の最後の地となれ鳴り響く浦上天主の双塔の鐘(観音寺市)篠原 俊則
【評】1首目、2首目、3首目はそれぞれの観点で広島・長崎を詠んだ秀歌である。正田篠枝さんは広島生まれ、歌は「太き骨は先生ならむそのそばに小さきあたまの骨あつまれり」。
軍事パレードで国威発揚する国に住む人々は幸せなりや(船橋市)佐々木美彌子
新米も秋刀魚もいらない引き換えに戦争とめてくれませんか(横浜市)菅谷 彩香
永田和宏選
影あるは人あればこそ人消えて影のみ遺(のこ)る石の階(きざはし)(名古屋市)浅井 克宏
パイロットのにやりと笑ったあの顔が忘れられんと義母(はは)の遠い目(浜松市)久野 茂樹
【評】浅井さん、広島平和記念資料館に遺る「人影の石」。影の本体たる人が亡く、影のみが遺るという絶対不条理。
久野さん、機銃掃射のため降りてきたパイロットの顔が見えたという話が多い。現在のドローンによる空爆も、どちらも怖い。
爆心地に立つも弟をハグするもこれが最後の訪日となる(アメリカ)大竹幾久子
「かあさんはあとで食べる」と子らだけにご飯与えた戦後の母は(金沢市)竹内 一二
「終戦日」と言われて動かぬ馬の耳「敗戦日」と聞きピクリと動く(鎌倉市)佐々木 眞
二〇二五年八月六日八時 おくらをひとつひとつ採っている(富谷市)川村 空也
【評】日常が一瞬で地獄となった広島。嚙(か)みしめ味わう普通の暮らしだ。
京都短歌 朝日新聞 朝刊 永田 淳選
我が上に落ちぬと思わん思うべし核の使用は杞憂(きゆう)にあらず(宮津)佐藤 正路
【評】空が落ちてこないかと心配したのが杞憂。絵空事ではなくなってきた現実がある。二句三句の畳語(じょうご)が効果的。
『畳語』とは同じ言葉を繰り返して使う言葉⇒清々しい、初々しい、色々、青々、イライラ、ハラハラ、ドキドキ
終戦を知りしは仏印サイゴンと痩せたる父は夜更け語りぬ (舞鶴)吉富 憲治
赤旗日曜版 短歌 選者 久々湊盈子(くくみなと
えいこ)
哭(な)くような終戦詔勅(しょうちょく)聞きながら桑の実食(は)みしあの夏の日よ
(大阪府) 辻井 康祐
【評】92歳の作者。少年の耳に聞き取り難かった放送よりも桑の実の方が強く記憶に残っているのだ。
ちひろ画の「戦火の少女」の視線にはかつてベトナム、今ガザ、ウクライナ (東京都) 二瓶 誠一
亡弟(おとうと)の生後三日目の祝宴に届きし父の召集令状 (香川県) 稲 孝子
サツマイモ掘りて田水で洗い喰む疎開先での学校帰り (長野県) 古藤 良枝
赤旗日曜版 短歌 選者 下村すみよ
自国は持ち相手国には持つなと言う大国のエゴ核兵器のこと (岡山県) 久本にい地
花になり草になりつつシベリアの大地に根付く父の骨あり (香川県) 稲 孝子
夕方、むくのきセンターまでお散歩、西の山の向こうに……
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