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2025年12月1日月曜日

戦争を詠む 朝日新聞朝刊朝日歌壇より(毎週日曜日掲載)

朝日歌壇(毎週日曜日朝刊)の入選歌(選者は、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、川野里子さん、)より、戦争を詠んだ歌を、わんちゃんが独断で選り抜きを。

☆⇒共選作

2025年 11月 11/2 11/9 11/16 11/23 11/30

 

永田和宏選

生きたかった兵士の数が「戦果」という酷き言葉に置き換えられる(観音寺市)篠原 俊則

空襲の下でかぼちゃを植ゑてゐる徳川夢声の敗戦日記(蓮田市)石橋 将男

 

佐佐木幸綱選

戦車かと見紛(みまが)うようなコンバイン二反ばかりをとっとと済ます(竹田市)伊藤信一郎

 

高野公彦選

復員の父待つ幼の心情を歌ったと知る「里の秋」三番(神戸市)今井  修

【評】確かに三番の歌詞は、椰子(やし)の島から復員してくる父を待つ、という内容だ。

顔も名前も個別性もない兵たち。

武器にさへコスパ、タイパは重視されいよよ命は軽視されゆく(名古屋市)浅井 克宏

改憲し教育勅語、徴兵制、治安維持法そして戦争(朝霞市)岩部 博道

【評】改憲したらまた暗黒の歴史を繰り返すのでは?という危惧を詠む。

ゼレンスキーの米国援助への感謝知り吾が税金に誇り覚える(アメリカ)大竹  博

武器といはず防衛装備品といふ「転進」とかつていひしこの国(西条市)村上 敏之

【評】政治家や軍人たちが言語操作で事実を誤魔化(ごまか)そうとすることへの批判。

 

川野里子選

 戦争の後遺症はありました。主治医の前で気を付けした父(尼崎市)小石 絹子

【評】医者に症状を語るかのような口語が利いている。

 征くときも帰さるるときも死ぬときも百人単位の北の兵士ら(大和郡山市)四方  護

【評】顔も名前も個別性もない兵たち。

ガザのロバあんなに大きな耳澄ませ聞いているんだ夜の虫の声(大和郡山市)四方  護

【評】砲撃の間の静寂。命が命を敏感に聴きとめる。

いくたびも「火垂るの墓」に咽(むせ)びしよ反抗期の息子も亡き娘(こ)も吾も(市川市)山崎 蓉子

【評】バラバラになりそうな家族が心を重ねた時間があった。

焼夷(しょうい)弾降り道燃えき「父ちゃん手つないで行こうか」父は答えず(川崎市)箕輪京四郎

【評】一緒か別々か、どちらが生き残れるのかを一瞬考えた父か。

無人機は何度も襲いくるという 枯蓮(かれはす)の池に風が吹き込む(生駒市)高橋 裕樹

【評】蓮田を吹く風に戦地の無人機の風が重なる。

 

『番外編』赤旗日曜版 下村すみよ選

日本人ノーベル賞の記事の横ガザの戦闘二年の見出し(宮崎県)黒木 直行

 

【寄り道】

里の秋

童謡・唱歌 作詞;斉藤信夫  作曲:海沼実

しずかなしずかな 里の秋

おせどに木の実の落ちる夜は

ああ かあさんと ただ二人

栗の実にてます いろりばた

 

あかるいあかるい星の空

なきなきよがもの渡る夜は

ああ父さんのあの笑顔

栗の実たべては思い出す

 

さよならさよなら 椰子の島

お舟にゆられて かえられる

ああ父さんよ ご無事でと

今夜もかあさんと祈ります

 


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