2025年7月31日木曜日

戦争を詠む 朝日新聞朝刊朝日歌壇より

 戦争を詠む 朝日新聞朝刊朝日歌壇より(毎週日曜日掲載)

朝日歌壇(毎週日曜日朝刊)の入選歌(選者は、川野里子さん、高野公彦さん、佐佐木幸綱さん、永田和宏さん)より、戦争を詠んだ歌を、わんちゃんが独断で選り抜きを。

☆⇒共選作

 20257月 7/6   7/13   7/20    7/27 

永田和宏選

宗教の対立による戦争より損得でやる戦争怖し(名古屋市)浅井 克宏

非常時に核シェルターになるだろか地下三階の北習志野駅(船橋市)佐々木美彌子

【評】ウクライナでは実際にシェルターとして使われていた。

「パイロット目がけて石を投げつけた」叔父の空襲の昔話(高松市)島田 章平

 

佐佐木幸綱選

A五判九百ページの三行に祖父は眠れり連隊史の中(中津市)瀬口 美子

原爆碑に涙するありジャンプして写メ撮るもあり共に若人(奈良県)葛原 洋子

 

高野公彦選

 核兵器作らせぬための空爆に正義はありや人道はありや(朝霞市)岩部 博道

敵味方なく刻まれた平和の礎(いしじ) 摩文仁(まぶに)の海をともに眺める(甲州市)山下 栄子

【評】敵味方の区別なく沖縄戦の戦死者約24万人の名が刻まれた平和の礎は、まさに平和への祈りそのもの。

物価高あっても戦争出てこない五十年前のサザエさんには(宇都宮市)生沼 牧子

あの日雨で遠足が美術館に変わり「原爆の図」を見ることができた(東京都)上田 結香

【評】運悪く雨で遠足が中止され、代わりに原爆の悲惨さを知った運の良さ。

被爆者とハグしたオバマ原爆に意味があったと語るトランプ(観音寺市)篠原 俊則

【評】以前の大統領は広島で被爆者とハグしたが、今の大統領は大違い。

スケボーを広場で遊ぶ子どもらの年端(としは)でゆきけり特攻兵は(神戸市)松本 淳一

飢えさせて食糧送り寄り来たる無辜(むこ)の民撃つネタニヤフ軍(多摩市)田中 久幸

こんなにもグルメ番組多いとはガザの人らにとても言へない(東京都)上田 国博

【評】ガザで飢えている多数の人々への〈すみません〉の気持ち。

 モンゴルに一七〇〇人の無念の死ありしを教える両陛下の訪問(安中市)鬼形 輝雄

 

川野里子選

空爆の報聴きつづけ均衡をたもつ体の時に傾く(高松市)樋口淳一郎

【評】ふと体のバランスを崩したのは相次ぐ空爆の報のためか。

心配ないあれは地球の片隅の溶接作業の平和な火花(石川県)瀧上 裕幸

【評】戦争や災害の火花があちこちにある今日の不安が伝わる。

炎天下無人の道をゆきたるはコンビニ無人配送ロボット(八王子市)額田 浩文

【評】無人兵器のようで、便利だけれどちょっと不気味。

窯元の薄暗き棚に目をやれば焦げ茶の釉(ゆう)の手榴弾(しゅりゅうだん)あり(宇都宮市)生沼 牧子

【評】第二次大戦末期、苦肉の武器を焼かされた窯元だ。

ガザの子と俺の裸はよく似てる食べたいけれど食べられないのだ(富士宮市)脇本 俊雄

【評】食べられない理由は違うがその苦しみは身体で分かる。

敗戦後市場(いち)に見つけた饂飩玉(うどんだま)光る白さに泣けたと亡き母(西宮市)坂本 栄子

 

【番外編】久々湊盈子選 しんぶん赤旗日曜版

ユーカリの葉が銀白色に光る日に広島に向け行進は発つ (東京都)中沢 隆吉

【評】室内で観賞用に育てるユーカリに銀世界という種類がある。原水爆禁止国民平和大行進に参加された作者。

病弱で兵検落ちし亡き父は四男四女農で育てぬ (大阪府)上柿 定芳

 

【京都短歌】中西 健治選

ねえみんな今こそイマジンしてみよう戦(いくさ)なき世の明るい未来(宇治)山本 明子

【評】殺伐たる情報ばかりが大手をふるっている現代。こんな歌を掲げてみてもいいのではと心底思うことだ。


折々のことば:3451 鷲田清一

2025728日:朝日新聞朝刊

 沢山(たくさん)の兵員と優秀な武器だけで戦争は勝てるものなのか。そんなことを信じてる人たちを……腹の底からケイベツしたい

 (殿山泰司)

     

 中国の戦線を5年近く「引っぱりまわされ」、たった一人の弟も旧ビルマで亡くした俳優。戦後多くの遺族が強いられた憂き目も思うと、「悲しみとイキドオリ」はついぞ消えないという。自国を「自分たちを幸せにしてくれるすばらしい国」と思える国民には、外交も戦争も「取引(ディール)」などではありえない。『三文役者のニッポン日記』から。

 

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